桶おけ
物語のなかに29回あらわれることば
細長い板を円く並べ、箍(たが)で締めてつくる円筒形の木の容器。水・味噌・漬物などに用いる。
ことばの由来
語源は諸説あり定かでない。板を結い締める結桶(ゆいおけ)が広まったのは中世以降とされ、それ以前は一枚板を曲げた曲物(まげもの)や刳り抜きが主だったといわれる。
[参考文献]石村真一 『桶・樽』法政大学出版局
この語が息づく話
- 06柘榴口の暗がりをくぐって、湯屋の二階へ上がる
- 07山あいの寺で、夜明け前に鐘楼へのぼる、ひとりの男
- 08平四郎が杉板に描いた、神さまへの一頭の馬
- 10晦日の辻の屋台、左の端に伏せてある欠けた丼
- 20堺の店先で見た、褐色の珠と、白い木肌の珠
- 22堺の菓子屋、七日目の鍋の粒
- 41黒と白の石が、いちばん静かだった遊びのこと
- 46京の西のはずれ、紅の屑をえり分ける子がいた
- 50禅寺の裏木戸に積まれた、幾つもの崩れた白い塊
- 54五つの塚と、名を残さなかった女房の掌
- 56雨宿りの軒先で、藁の目を数えていた小さな指
- 58神田の長屋に、畳一枚を入れたおすみの算段
- 68板を寄せて竹の輪で締めただけの、継ぎ目だらけの桶
- 77峠のふもとで分けた、白く乾いた一にぎり——旅人が腰から離さなかったもの
- 80花の一瓶をまえに、幾度も抜いては挿し直した男がいた
- 81継ぎの上に、なお白い糸を刺す雪の里の夜
- 86築地塀の外に立つ母と、娘が書いた一枚の梶の葉
- 87瓜十と豆ひと升で買った、半年ごしの一桶——近江の湖べりの取り決め
- 92肌の下に隠れていた、袖の細い一枚
- 95冬の寄り合い所、届出の列のいちばん後ろに立った平助
- 102白い山の前で、指がさきに動いた、竈の子のこと
- 108戸を、ひとり吊りあげる手——四十年、屋敷を起こし続けた老爺のこと
- 117米のとぎ汁が黒髪に艶を与える——泔坏を仕込む下働きの手
- 120車輪が軋んだ大路で、耳をすませていたのは小さな手だった
- 122羊のいない羊羹、禅寺の台所で重ねた十一度の作り直し
- 123粉のほとんどを流し捨てて、なお椀に残った白い塊
- 129地を掘り水を汲み上げる一つの穴のまわりに、村と町が寄り集まっていった日のこと
- 135遅い足で板を渡った男と、春の社頭に集まった人垣
- 143夜明け前の店先の鉢の列と、苗を二百抜いて七つ残した植木屋
※ 語の読みは本文の振り仮名から、登場話は本文から機械的に集めています。定義・由来は出典を確かめたうえでそえています。