几帳きちょう
物語のなかに10回あらわれることば・ある話の主役の題材
台に二本の柱を立て横木を渡し、帷子と呼ぶ布を垂らした、平安貴族の住まいで用いた移動式の間仕切り。
ことばの由来
小さな台や脇息をさす「几」に、垂れ布を意味する「帳」を重ねた語とされる。台に布を掛けて空間を区切る調度の形をそのまま名としたと説明されることが多い。
[参考文献]川本重雄 『寝殿造の空間と儀式』中央公論美術出版/小泉和子 『室内と家具の歴史』中央公論新社
この語が息づく話
- 17合わせてみれば、答えはもう貝が知っていた——蛤の殻でさがした、たったひとつの片割れのこと
- 41黒と白の石だけで、盤の上に国境を引く——男も女も向きあえた、平安の静かな遊びのこと
- 54臭いだけの欠片を練り合わせると、人を恋しがらせる匂いに化けた——香りが人の名札だった頃のこと
- 84その薄い一枚は、外から内を隠し、内から外を残らず見せていた
- 89散りゆく春を、ひとすじの色に閉じ込めて袖に纏った娘のこと
- 90暑くもないのに、なぜ都じゅうが一日で夏の衣に着替えたのか
- 94裳をひと垂れ腰に結べば、その日から子は女と呼ばれた——髪を上げ、装束を着けて大人になる日のこと
- 97壁を立てず、布で部屋をこしらえた——几帳の陰が、人と人の「間」をつくっていたころ
- 107壁のない広間に、几帳を一つ立てれば、そこが部屋になった——間仕切りで暮らしを区切った、住まいの「あいまいさ」のこと
- 108光と風は、跳ね上げて招くもの——格子の戸を吊って開けた、ある夏の屋敷のこと
※ 語の読みは本文の振り仮名から、登場話は本文から機械的に集めています。定義・由来は出典を確かめたうえでそえています。